市場の現在地

資料室 / 語彙

ARCHIVE 04 — LEXICON

語彙

この機関が市場を見るときに使っている概念の定義です。フレームワークを公開するのは、手の内を隠さないという姿勢の表明でもあります。引用・参照はご自由にどうぞ。

観測OBSERVATION
公開情報の中に実在する記述を、逐語引用とともに記録すること。評価・採点・推測を含まない。この機関が扱う一次情報はすべて観測であり、観測でないものは事実として扱わない。
NOTE「調査」と呼ばないのは、調べた量ではなく確認できたことだけを扱う姿勢を、語のうえでも保つため。
事実 / 解釈 / 仮説THREE LAYERS
すべての記述が属する3つの層。事実は逐語引用で裏づけられた観測、解釈は観測から導いた読み筋(必ず「〜と読める」の文体)、仮説は未検証の提案(必ず成り立たない条件を併記する)。レポート上では緑・青・紫で区別される。
NOTE混ぜないことがこの機関の中心的な規律であり、レポートの説得力の源でもある。
関連 → /method
逐語引用の検証QUOTE VERIFICATION
分析エンジンが出力した観測について、その根拠となる引用が取得したページ本文に一字一句そのまま実在するかを機械的に照合する処理。照合に失敗した観測は、もっともらしくても棄却される。
NOTE生成AIの推測を観測として出さないための仕組み。この装置の背骨にあたる。
関連 → /method
8視点EIGHT VIEWPOINTS
企業サイトを観測するときの固定した切り口。主なターゲット・約束している価値・強調している強み・根拠と実績の示し方・価格の見せ方・専門性の訴求・安心の訴求・革新性の訴求。商品を観測するときは、想定顧客・解決する課題・中核便益・差別化の根拠・実績と証拠・価格とプランの見せ方・導入障壁の下げ方・カテゴリ言語に入れ替わる。
NOTE切り口を固定するのは、比較を可能にするため。対象ごとに視点を変えると、それは比較ではなく個別の感想になる。
カテゴリ言語CATEGORY LANGUAGE
売り手が自分の商品を何と呼んでいるかという自己分類。「◯◯サービス」「◯◯プラン」「◯◯システム」「◯◯体験」など。商品の観測における固有の視点のひとつ。
NOTE買い手が探すときに使う言葉と、売り手が名乗る言葉がずれていることは多い。そのずれに空白が生まれやすいため、独立した視点として観測している。
関連 → /archive/specimen/002
訴求強度APPEAL SCORE
各訴求カテゴリが、そのサイト上でどれだけ構造の中心にあるかを0〜3で表した観測値。0は言及なし、1は軽く触れる、2は繰り返し訴求、3は構造の中心。出現の有無・頻度・配置(ファーストビューにあるか等)から付ける。
NOTE事業の優劣を測る指標ではない。「実績が3」は実績が優れているという意味ではなく、実績の語が構造の中心にあるという意味である。
ホワイトスペース(空白地帯)WHITE SPACE
観測した全対象を突き合わせたとき、どこもまだ強く語っていない領域。「競合が言っていて自社が言っていないこと」ではない点が重要である。
NOTE競合との差分を埋めにいくと、埋めた瞬間に横並びになる。誰も立っていない場所を探すことが目的。
ポジション仮説(1案主義)POSITION HYPOTHESIS
観測から導いたポジション仮説を、必ず1案に絞って提示する節。併記や両論はしない。競合が占有済みのポジションとの競争を避ける理由まで含めて書く。
NOTE選択肢を3つ並べれば分析としては安全だが、読み手は決められない。決められる形にすることが、調べることとの違いである。
観測できなかったことINSUFFICIENCIES
レポート末尾に必ず置かれる、この分析が言えないことの申告。取得できなかったページ、テキストが薄く観測が不完全なサイト、範囲外の事柄を隠さず書く。
NOTE埋められた空欄より、正直な空欄のほうが判断の役に立つ。ここを読めば、この分析をどこまで信じてよいかが分かる。
取得品質FETCH QUALITY
各サイトからどれだけテキストを取得できたかの3段階の記録。full(十分)/ partial(一部)/ thin(薄い)。JavaScript描画などで本文が取得できない場合、観測は不完全になるためレポート上に明示される。
NOTE「価格の記載がない」と「価格ページを取得できなかった」は別のことである。両者を混同しないための指標。
訴求の型PATTERN
市場で繰り返し観測される訴求構造の分類。実績横綱型・価格開示型・ビジョン先行型・専門一筋型など。企業の分類ではなく、サイト上の訴求構造の分類である。
NOTE型に優劣はない。どの型にも強みと死角があり、市場の中で何が混んでいるかによって有利不利が入れ替わる。
関連 → /archive/patterns
定点観測TIMELINE
過去に保存した観測を同じ条件で再実行し、差分を取ること。変わった訴求、埋まった空白、空いたままの空白を記録する。
NOTE変化がなければ「変化なし」と書く。動きのない市場を動いたと書かないこと、そして「前回取得できたページが今回取得できなかった」を「訴求が消えた」と混同しないことが、この室の規律。
AI可視性AI VISIBILITY
生成AIが、ある企業をどれだけ・どのように説明できるかの観測。想起されるか、何と説明されるか、AIが提示する市場の類型のどこに置かれるか。
NOTEAIが知らないことは事業の評価ではなく、一側面の観測にすぎない。またこの室では、AIの回答は記録するが正誤は判定しない。
関連 → /archive/papers/ai-does-not-know-your-company
ファーストビューFIRST VIEW
ページ最上部で最初に目に入る主張。すべての観測対象で独立した視点として記録する。
NOTE限られた面積に何を置いたかは、その組織が何を最も強い武器だと考えているかの表明にほかならない。多くの市場で、ここが最も差の出る場所になる。
説明が要る商材EXPLANATION-HEAVY PRODUCT
買い手に判断基準がない、決める人と使う人が違う、効果が遅れて見える、流通が間に挟まる ── この4条件のいくつかを満たすため、公開情報上の説明の設計がそのまま売れ方を左右するBtoB商材。産業機械・素材・農業資材・検査サービス・業務特化SaaSなどに多い。
NOTEこの機関が専門とする観測領域。4条件の定義と、そこで繰り返し観測される構図は「観測領域」のページに。
関連 → /field
説明の起点STARTING POINT
商品ページが、買い手の理解の三段 ── それは何か/なぜ今要るか/なぜこれか ── のどこから語り始めているかの観測。観測表では「解決する課題」の行に現れる。
NOTE説明が要る市場では、各社の起点が「なぜこれか」に揃い、「なぜ今か」が空白になることが繰り返し観測される。
関連 → /archive/papers/explanation-starting-point
判断基準の空白CRITERIA GAP
買い手が「何で選べばよいか」を知らず、売り手の誰もその基準を渡していない状態。仕様が並ぶだけの市場で起きやすい。判断基準を先に渡した側は、その基準で比較される。
NOTE空白の中で最も取る価値が高いことが多い。ただし需要の裏づけは装置の範囲外であり、BRIEFの領域。
出来事の言葉 / 方式の言葉EVENT WORDS / METHOD WORDS
買い手が最初に使う、困りごとや出来事を表す言葉(「異物クレーム」「監査基準が変わった」)と、売り手が名乗る技術・方式の言葉(「金属検出機」「AI検査」)。両者のずれが、カテゴリ言語の空白を生む。
関連 → /archive/papers/category-language
決める人と使う人DECIDER / USER
説明が要る商材では、稟議を書く人・承認する人・毎日使う人が別々であることが多い。観測表の「想定顧客」の行を縦に読むと、市場の各社がそのうち誰に語っているかの分布が見える。誰も語っていない相手がいれば、そこが空白。
NOTE「使う人」に向けた言葉は、決める人が現場を説得する材料にもなる。
効果の遅延DELAYED EVIDENCE
導入の効果が、季節をまたぐ・事故が起きない限り見えない・数年後に現れる、といった理由で短期に確認できない性質。実績訴求が「導入数」に偏り、「導入後に何が変わったか」が語られにくくなる原因。
NOTE農業資材や検査機器に典型的。数ではなく変化を語る場所が空きやすい。
流通の壁CHANNEL WALL
販売店・代理店・指導機関が間に挟まり、メーカーの言葉が買い手に直接届かない構造。メーカーサイトが「詳しくは販売店へ」で止まる(型鑑 P-15)原因であり、Web と生成AI の両方にメーカーの説明が残らない。
関連 → /archive/patterns
説明コストCOST OF EXPLANATION
買い手が商材を理解するまでに払う時間と労力。説明が要る商材では、この負担を誰が引き受けるか ── メーカーの Web、販売店、買い手自身 ── が市場の構図を決める。Web が引き受けていない市場では、最初に Web で引き受けた一社が目立つ。

これらの概念が実際の観測でどう使われているかは標本室で、規律としての全文は手法でご覧いただけます。