「うちの商材は、説明しないと売れない」。そう語る企業のサイトを観測すると、共通した構図が見つかる。説明の量は多い。仕様、方式、認証、事例。足りないのは量ではなく、説明の起点である。
説明には順番がある
買い手が商材を理解する順番は、大まかに三段に分けられる。それは何であるか。なぜ今、自分に要るのか。そして、なぜ他ではなくこれなのか。この三段のうち、売り手が最も語りたいのは三段目である。自社の優位は、そこにしかないからだ。
しかし説明が要る商材の買い手は、多くの場合、二段目にいる。今の設備のままで何が起きるのか。見直すべき出来事はいつ来るのか。そもそも自分が困っていることは、設備で解決する種類の問題なのか。この問いに答えが出ない限り、三段目の優位は意味を結ばない。
市場全体が、同じ段から語り始める
個社の問題なら、直せばよい。しかし観測すると、これは市場の構図として現れる。標本004では、4商品のうち課題を書いているのは2つで、その2つも「なぜ今見直すか」には触れていなかった。全社が三段目、あるいは一段目(仕様)から語り始めている。市場のどこにも、二段目に立っている商品がない。
理由は単純で、各社が互いを見て書いているからである。競合が仕様を書けば仕様で応じ、競合が AI と言えば方式で応じる。比較の軸は自然に三段目に揃い、その揃い方そのものが、二段目を空白にする。
説明が要る市場ほど、各社の説明は同じ場所に固まる。混み合う場所はいつも「なぜこれか」であり、空くのはいつも「なぜ今か」である。
「なぜ今か」は、出来事の名前で書ける
二段目に立つとは、抽象的な啓蒙をすることではない。買い手の側で起きる出来事を名指しすることである。取引先の監査基準が変わった。ラインを増設した。包材をアルミに切り替えた。担当者が代わった。こうした出来事の一つひとつが、「今のままでは何が起きるか」という問いを買い手の中に生む。
出来事を名指しした商品は、その出来事が起きた瞬間に、買い手の最初の候補になる。方式の優位を語る前に、判断基準を渡しているからである。判断基準を渡した側は、その基準で比較される。これは、説明が要る商材における最も強いポジションの取り方だと私たちは考えている。
観測のしかた ── 「解決する課題」の行を縦に読む
私たちの観測表で、この構図は「解決する課題」の行に現れる。空欄が多ければ、市場は一段目か三段目から語っている。書かれていても、それが「監査に通らない」「人の目がばらつく」といった状態の記述で、「見直すべき出来事」に触れていなければ、二段目はまだ空いている。
一手は、商品ページの冒頭を書き換えることから始まる。仕様の表を消す必要はない。その上に、見直しが必要になる出来事を三つ、名指しで置く。それだけで市場の中で唯一「なぜ今か」に立つ商品になる場合が、観測の上では珍しくない。
説明が要る商材は、説明の量で売れるようにはならない。買い手がいる段に、先に立つことで売れるようになる。私たちの観測は、その段が市場の中で空いているかどうかを確かめるためにある。